10月19日(月)
秋の夜長、アラカンマンは人生を語る……つもりだった。
秋になると、夜が長くなる。
若いころは、夜が長ければ長いほど得をした気がした。友人と飲み、くだらない話で笑い、気がつけば終電。翌朝は眠い目をこすりながら会社へ向かったものだ。
ところが、アラカンマンもそろそろ人生のベテラン。最近は、夜が長いと聞くだけで、なんだか得をした気分になる。
「よし、今夜はゆっくり本でも読むか」
そう決めて、眼鏡を拭き、机の上を片づけた。
準備は完璧。お気に入りの椅子に座り、背筋を伸ばす。
本を開く。
……五分後。
「うーん、今日もなかなか忙しかったな」
十分後。
「ちょっと横になって読むか」
十五分後。
本が顔の上に落ちてきた。
おいおい、まだ人生を振り返るところまで進んでいないぞ!
気を取り直して、今度は温かいお茶を用意した。窓の外はすっかり暗く、虫の声もどこか控えめ。季節が進んでいることを感じる。
若いころは、時間を追いかけていた。
今は、時間をゆっくり味わうのも悪くないと思う。
何かを成し遂げる夜があってもいい。
何もしない夜があってもいい。
ただし、寝落ちして本を顔面に落とすのは、できれば避けたい。
アラカンマンの親父格言
「秋の夜長は人生を考える時間。ただし、考える前に寝てしまうのが親父の特技である」
さて、明日はもう少し読もう。
……まずは、しおりを買うところからだな。


