第一話 地震雷火事還暦

防災・備え

昨日の地震、夜中の2時半くらいだったか。

爆睡していたのに、あの揺れで起こされた。

そのあと、なかなか寝つけない。

あんな夜襲、久しぶりだ。

そういえば阪神・淡路大震災のときも、夜明け前だった。

確か4時か5時くらいだったと思う。

当時、横浜のアパートの2階で寝ていた私は、突然、下からドンッと叩き起こされたような感覚だった。

私は昔から、

「大地震っていうのは、ドン!と縦に来るもんだ」

と思っていた。

新潟地震も、利尻の地震も、なんとなくそんなイメージだった。

ところが東日本大震災。

あの嫌な横揺れだ。

そして今回も、茨城県が震源。

長い。

揺れが長い。

「おいおい、これ、まだ続くのか?」

と、布団の中で考えてしまった。

地震ってのは、揺れている最中より、そのあとが怖い。

テレビをつける。

スマホを見る。

家の中を見回す。

「何か落ちてないか?」

「水は大丈夫か?」

「電気は?」

「ガスは?」

還暦ともなると、昔とは違う。

若いころなら、

「まあ、なんとかなるだろ」

で済ませていた。

今は違う。

なんとかならないことを、先に考える年齢になった。

関東で暮らしている人間なら、計画停電を経験した人も多い。

あの真っ暗な街を知っているだけでも、多少は心の準備ができている。

でもな。

水。

これは本当に確保しておいたほうがいい。

そして火の始末。

避難場所。

薬手帳。

マイナンバーカードなどの身分証。

必要な連絡先。

そして――

靴。

「靴がなんで防災なんだ?」

と思ったあなた。

まだまだ甘い。

地震で家の中のガラスが割れた。

家具が倒れた。

床にガラス片が散らばった。

そんなところを裸足で歩いたらどうなる?

当然、怪我する。

だから、

「靴がどこにあるか」

を知っておく。

これ、結構大事だと思う。

寝ている場所から手を伸ばせば取れる。

あるいは、すぐ履ける場所に置いておく。

それだけでも違う。

そして、もう一つ。

いや、むしろ一番困るかもしれないもの。

トイレだ。

水が止まったら、ウォシュレットどころの話ではない。

私なんか、すっかりウォシュレットに慣れてしまっているから、

「便器はある。水もない。さて、どうする?」

となる。

答えは――

ビニール袋。

結局そこに戻ってくる。

最近は中東情勢などの影響で、燃料や石油化学製品の価格も気になる。

「そのうち買えばいいや」

なんて言っているうちに、必要なものが手に入りにくくなることもある。

だから災害用トイレくらいは、まだ普通に買えるうちに用意しておいたほうがいい。

便器にセットするタイプなら、いざというときにも使いやすい。

ナップザックに入る防災セットもいい。

水もいる。

食料もいる。

でもな。

出すものを出せないのは、かなり困る。

これは還暦になって、しみじみ思う。

それから、もう一つ。

「そこまで考えるか?」

と言われそうだが、私は粉じん対策用のマスクも用意した。

しかも家族分。

「富士山が噴火するわけないだろ」

まあ、そうかもしれない。

でも、富士山だけが火山じゃない。

浅間山もある。

那須岳もある。

関東甲信越には活火山がいくつもある。

別に明日噴火すると思っているわけじゃない。

ただ、

「そんなもの、いらないだろ」

と言っていたものが、いざ必要になったとき、

買っておけばよかった……

となるのが一番悔しい。

還暦を過ぎると、若いころとは防災の考え方も変わる。

「大丈夫だろ」

ではなく、

「大丈夫じゃなかったらどうする?」

を一度くらい考えておく。

これがアラカンの知恵なのかもしれない。

地震、雷、火事、親父。

昔から怖いものは決まっている。

でも還暦を迎えた今、そこに一つ加えたい。

地震、雷、火事、親父、そして――トイレ。

災害が起きてから、

「しまった!」

では遅い。

水と、トイレと、靴。

まずは、この三つくらいから始めてみるか。

……ウォシュレットは、そのあとだな。

還暦親父、そこだけはまだ諦めていない。

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